『破滅の淵に立つアメリカと中国~瀬戸際から一歩引く最後のチャンス』

すべて

(Foreign Affairs:2026/2/12)

America and China at the Edge of Ruin
A last chance to step back from the brink.

グローバリストらしいForeign Affairsの提言。かつてのパンダハガーの失敗は無視して、中国と仲良くすることが世界の平和安定につながるという内容。中国という国、中国人という人への誤解が迷信を生んでいる。
ただ、アメリカでは、キリスト教の没落の隙にサヨク思想が紛れ込んでの倫理感崩壊と分断や内戦、中国は専制体制の経済崩壊という国家存亡の危機にあり、中国とは個別のディールはあるでしょうが、アメリカは否が応でもアメリカファーストにに取り組まなければならない。日本も他人事ではありません。曰く、

——-

・2010年代初頭以降、北京とワシントンの関係は緊張した対立へと着実に移行している。両国は単なる競争相手としてではなく、重要な国家利益に対する脅威と見なしている。これは、海外からの影響だけでなく、国内の政治インセンティブ、お役所仕事、脆弱性、衰退・地位に対する根深い不安から起きている。各国が互いを抑さえこもうとする強硬な試みが、防衛・経済・文化・外交の各分野で摩擦を引き起こしている。ヘッジ行動として始まったのだが、長期的な敵意を原則に置く戦略的姿勢へと硬化させた。

・二つの最も強力な国々が相互の敵意を中心に戦略を策定する世界は、紛争を制御不能な状態に陥れる可能性がある。全世界で敵意・衰退・社会不安が恒常化し、ついにはそのコストは中国とアメリカだけではなく全世界にかぶさってくることになる。緊張が高まっている中では、意図的な攻撃より偶発的な衝突がより危険である。例えば、2001年4月、海南島付近での中国とアメリカが戦闘機衝突事故。1999年5月、アメリカがベオグラードの中国大使館を爆破した事件。これらは米国が事故であったと主張しているが、仮にこのような事件が今日の状況下で起こったら、核戦争を引き起こす可能性がある。

・とはいえ、この流れは止めることは可能だ。今後数か月間で、両国の政治的展開・経済的要請・戦略的疲弊が、ひょっとしたら二国間関係の安定化と正常化を促進する環境を作るかもしれない。しかしそのような機会はあったとしてもデリケートなものであろう。米中関係のベテラン研究者として、我々は約60年にわたり二国間関係の変動を経験してきた。両国間の対立の影も理解している。次の世代が新たな冷戦に突入する可能性は低いだろう。適時かつ意図的な政策行動がなければ、これまでの流れと競争意識が世界的な影響を与える結果を引き起こすリスクが高まる。世界が必要としているのは、両国をそのような窮地から引き戻す新たな関係正常化である。

・現状では、双方が最悪の前提の視点から互いを見つめている。アメリカでは、中国は「米国のグローバルリーダーシップ、技術的優位性、経済的優位性、民主主義規範に対する挑戦者」として認識されている。中国では、「米国は中国の台頭を抑え、中国共産党を弱体化させ、『アメリカ第一』を中国の犠牲の上に維持しようとする勢力」として広く認識されている。これらの認識はもはや口先だけでなく、軍事計画、同盟およびパートナーシップ体制、輸出管理体制、公的な外交にリアルに組み込まれている。

・経済的には、米中相互依存は経済的には安定化要因と見なされてきた。それが世界経済成長に寄与したことは間違いない。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した際、同国の1人当たりGDPは1,065ドル、米国のGDPは37,133ドルだった。2023年までに、中国では12,951ドル、米国では82,769ドルとなった。一方で、両国の国内では問題が発生した。中国東北部は失業の深刻な打撃を受け、米国中西部も同様であった。
その結果、両国は相互依存を「脆弱性」と見なし、経済は国家安全保障に従属するようになった。「デップリング」「デリスク」「自立」という言葉が示すように、包括的な輸出規制、産業政策、サプライチェーンの再編成は「成長よりも優先」されている。両国は、大きなコストをかけてでも相互依存を減らそうとしている。この動きは二国間の安定性を損なうだけでなく、世界的な市場の分断や不確実性にも寄与している。レアアースの取引や大容量半導体の販売における最近の混乱は、注目すべき2つの例である。

・以前にも似たような景色があった。朝鮮戦争、ベトナム戦争。互いに多くの米国人や中国人が犠牲になった。最終的には周恩来とキッシンジャー、毛沢東および米国との間で折衝後、当時のニクソン大統領は1972年は関係修復のためのトップダウンプロセスを開始した。これらの指導者たちは誤解を正し、平和と協力を促進することになった。(注:ここから、経済成長さえすれば民主化が始まるという妄想によるパンダハガーの失敗が始まる。)
習近平とトランプ大統領も同様の瞬間を迎えるかもしれない。2025年10月に習近平とトランプが釜山で会談した。両首脳は、貿易に関する米中関係における協力と緊張緩和を強調し、習近平は「中国と米国がパートナーであり友好国であるべきだ」と述べ、双方の長期的利益を重要視し、貿易と経済協力を関係強化の基盤とするよう促した。報道によれば、中国はアメリカ産大豆の購入再開、レアアースの輸出規制の停止、およびワシントンと協力して違法なフェンタニルの密輸を抑制することで合意した。
一方のトランプ大統領は米中関係の基盤を再構築しようとした。彼は習近平を「非常に強力な国の偉大な指導者」と呼び、外交や対立をめぐる貿易主導の協力に向けて、少なくとも言葉上は明確な変化を示している。彼はまた、首脳会談を「G-2」の集まりと呼び、中国に新たな、より高いレベルの尊重を示した。
しかしこのことを軽視してはいけない。はっきり言えば、中国もアメリカも、近隣諸国や中間勢力を広範に警戒させるような、二重覇権を追求すべきではない。しかし、彼らは国際システムや地域の安全保障体制において互いに余裕(?)を持つべきである。そうすることで、他国が暴走する大国間の競争の犠牲者になることはないと安心させることができる。今後、両国は、多極性と多連携の現実に連携を基盤とすべきである。

・両国が瀬戸際から一歩後退することを歓迎する兆しがある。両国の世論調査によると、人々は現在の対立は高コストであると認識しているようだ。たとえば、シカゴ国際問題評議会の最近の世論調査では、アメリカ人の過半数である53%が、現在アメリカが「中国と友好的な協力と関与を行うべきだ」と答えており、2024年の40%から増加している。2025年12月に清華大学国際安全保障戦略センターが発表した世論調査によると、中国市民はアメリカに対して態度を軟化させている。米国に対する意見を1~5の支持率で評価するよう求められた際、回答者の平均スコアは2.38となり、2024年の平均1.85から上昇した。(比較として、インドの支持率は2025年に2.06となり、ロシアの支持率は2024年の3.66から2025年には3.48に低下した。)

・結局のところ、中国もアメリカも強固で安定した中産階級を構築または再構築するというニーズがある。両国間の持続的な対立は、両国の経済に大きな打撃を与えるだろう。中国では、昨年10月に開かれた共産党中央委員会の第4回全体会議において「経済はより強靭で、柔軟で、外交政策上の混乱が伴わない政策を通じて、再び活性化される必要があるという考え」が大多数であった。かつての中国最高指導者である鄧小平の改革思想を彷彿とさせる。今後の試金石は、習近平がどこまで民間企業を優先し、国内のイノベーションを促進するかと言える。

・関係の安定を図る最初の最適の場所は、直感に反して最も危険な側面を持つが、長く続いている台湾である。台湾問題に迅速に対処することが重要で、多くの人々が考える以上に緊張緩和が進む可能性がある。中国の2005年の「反分離独立法(Anti-Secession Law)」は、台湾問題を解決するために北京が「非平和的手段」を講じる具体的な条件を定めている。すなわち、台湾が独立を宣言した場合、台湾が中国との分離につながる重大な事件が発生した場合、あるいは平和統一のあらゆる可能性が完全に枯渇した場合などである。中国政府自身の法的および政治的基準により、現在の両岸条件はそのような基準を満たしていない。さらに、SNS上で頻繁に憶測や感情を揺るがすコメントが寄せられているにもかかわらず、北京は「台湾への軍事的併合が迫っている」とか、あるいは「避けられないものである」とは公式には宣言していない。その代わり、中国政府は平和的統一志向をあらためて再確認し、大規模な武力行使で島を包囲するなど、大規模な抑止力を強化していると主張している。つまり、緊張した軍事的雰囲気にもかかわらず、台湾海峡をめぐる政治的敵対関係を緩和することは依然として可能である。

・中国もアメリカも経済的・文化的障壁といった既に重要な社会的合意があるという手を付けやすい部分から始めるかもしれない。
2020年7月に報復措置を示す形で閉鎖されたヒューストンと成都のそれぞれの領事館の再開
関税率の相互的かつ劇的な低下についての交渉
中国は輸出の一部に対する補助金の削減。など

・お互いを誤解している面もある。例えば、中国の一部の人々は台湾分離に関する外部圧力への対抗力が弱いと考えているとか、アメリカ人が中国がまもなく技術優位になると心配しているとか。これらの認識を低下させる重要な手段は、社会のあらゆる側面にわたってより深いつながりや関与を促進することである。例えば、ジャーナリストに対する制約緩和、学術的・研究的交流のパンデミック前の水準への回復とか。しかし、これは解決策の一部にすぎない。本当に雰囲気を変えるためには、それぞれの市民に参加したいと思わせることであり、そのため両社会の当局は、両国の学生や学者、メディアをスパイとして言及しないことによって、より居心地の良い環境を作り出せるかも知れない。

・最後に、両国が再び軍事協議を進め、事故や誤解の可能性を減らすだけでなく、米中が軍拡競争を進める課題に対処できるかどうかを検討する義務がある。こうした協議は、米中貿易、技術、イデオロギー、安全保障をめぐる緊張が単なる一時的なものではなく、長期的なものであるという認識に基づいていなければならない。出発点は、アジアおよびその先の両国に余地(?)があること、および緊張緩和に向けた努力を緊急に講じる必要があること、あらためて共同声明を行うべきである。

・今日、両国の政策立案者や学者は、人工知能を含む卓越した分析手段を利用できるが、この技術的能力は、グローバルな関係を健全に管理するために不可欠である。しかし、先進技術に依存する最も高度な政策立案者でさえ、耐えがたい命の損失をもたらすような本格的な戦争をシミュレーションすることはできない。中国と米国の間で致命的な対立を防ぐには、数十年にわたり築かれてきた戦略的記憶・記録、危機経験、異文化間信頼関係という、他の何かが求められる。
両国は今の流れを立て直すチャンスを持っている。両国がこの新たな正常化のチャンスを逃せば、将来的に戦略的利益を守ることは不可能になるだろう。両国が互いの目標やアプローチを再調整する絶好の機会は限られている。

タイトルとURLをコピーしました