2025年7月20日(注:11月20日の間違い)のナポリターノ判事主宰の「ジャッジング・フリーダム」でのミアシャイマー教授の発言。複数のテーマがありますが、特筆すべきは「アメリカがイラン核施設を攻撃したのは、さもなければイスラエルは核兵器(保有を公言していない)を使うと脅したから」との元CIA職員の告発に、ミアシャイマー教授が「さもありなん。これは本当の脅威だ」と断言している件です。
それぞれを簡潔に。
(1)ベネズエラへの圧力:
・ベネズエラはこれまでアメリカに対して脅威を与えてきたとは思えないが、
根っ子としてはアメリカと言う国は中南米での左翼(又は左翼寄り)政権が嫌いだということ。これまでもそういう政権を転覆させてきた事例に事欠かない。アメリカは心の奥底でそれが義務だと信じている。例えそれが国際法違反でも、アメリカ人が信じる世界を作る作らなければならないと信じている。
(2)トランプ大統領を激怒させた民主党議員のビデオメッセージ
・軍隊は強力な殺人兵器。それが唯一の目的だから当然。しかし、それを暴発すれば大変なので、やろうとしていることが、法的に正しい殺人なのか否か、全員の頭にそのルールを叩きこむ必要がある。
・「カリブ海上の非武装民間人で暴力行為を行なっていない小舟に麻薬取引船との疑いをかけて、アメリカ大統領が攻撃命令を出すのは合法か?」という問いに対して、合法であるはずはない(と、一蹴)。あのM16でさえ、合法とは思わないだろう。
・これに関して8人の民主党議員が「非合法な命令は拒否せよ」とのビデオメッセージを出し、それに対してトランプ大統領が「あれは反逆罪で死刑だ!」だと叫んでいるが、言っていることはまったくの正論で表現の自由の範囲内。しかし、現状の命令の多くは非合法であることは事実。非合法を思われる命令には上官と議論して確認するしかない。
・間違ってはいけないのは「命令を拒否せよ」ということではない。「非合法な命令を拒否せよ」ということ。
※日本で言えば「上官が最高指揮官を射殺せよ」と命令した時どうするか。明らかだと思います。表現の自由同様、上官の命令にも限界があるということでしょう。
※米軍は非合法だらけ、何らかの「大義」が感じられるならまだしもですが。
(3)ウクライナ
・戦況はというと、アメリカは支援を止め、ヨーロッパは金欠、ウクライナは汚職まみれ、ロシアはウクライナのインフラを破壊しつつある。戦争をもう止めるしかないが、その為に、ロシアは求めているものはすべて獲得して完勝の勢いである。しかし、そんな結果の受入を表明できるウクライナ人はいないだろう。
(4)イラン
・国連安保理が採択したトランプ大統領のガザ和平案は完全にイスラエル寄りで最悪のモノ。パレスチナ人には何の権利もない。統治するのはジェノサイドを進めてきたイスラエルとアメリカ?そして最高責任者がドナルド・トランプ?そして国際安定化部隊なるものを駐留させる?ハマスは武装解除できないとすでに言っているが、国債安定化部隊のミッションがハマスの武装解除になるのか?
・ショックを受けたのは、ロシアも中国も拒否権を行使しなかったこと。アラブやイスラム諸国がサポートする?
・サウジとアメリカの会談をイスラエルはそれほど気にしないはず。むしろ湾岸国のレバノン、シリア、エジプト、ヨルダンとイラン。ここのところの問題はアブラハム合意にサウジが参加するか否か。
・元CIA職員のJohn Kirikou(グアンタナモでのCIAの拷問実態を暴露して投獄された経験がある)は「アメリカがイラン核施設を攻撃したのは、さもなければイスラエルは核兵器(保有を公言していない)を使うと脅したから」と告発していることについて、確かな証拠はないが真実相当性が高いと思う。イランが核兵器を持とうとしていたのはほぼ間違いない。また、アメリカはイスラエルを抑える方法を持たない。それとは別にイスラエルにとっては最大の脅威(存亡の危機)と信じている。ロシアがウクライナのNATO化に対する危機感と同じ。

