(2)消費税はだれが負担するのか?
・「消費税は、価格への転嫁を通じて、最終的には消費者が負担することが予定されている税です。」(財務省)というのが財務省の公式説明です。この「予定」という表現はなんだか気持ち悪いですね。例えば、税前1万円だったものは、10%導入されると1万1千円になりますが、確かに何となく消費者は千円を負担しているように感じます。
・では何故「消費者が負担するのです」と言い切らないのかというと条文に答えがあります。第五条の課税対象には「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、この法律により、消費税を納める義務がある。」と明確に「事業者」に納税義務があると書かれています。では消費者にはどんな義務があるのかというと、消費者の義務どころか、消費者という単語は存在すらしてないのに驚かされます。
・財務省のWebサイト(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/tenkataisaku.htm)
には「消費税の転嫁対策について」というページがあり、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」とか「消費税率の引上げに伴う価格設定について」というガイドラインで転嫁対策を講じていると書いてあるのですが、「特別措置法」には消費者に関する記述はなく、「ガイドライン」には、
「消費税は、事業者ではなく、消費者が最終的には負担することが『予定』されているため、消費税率引上げ後に⼩売事業者が値引きを⾏なう場合、消費税転嫁対策特別措置法により、『消費税はいただいていません』『消費税還元セール』など、消費税と直接関連した形で宣伝・広告を⾏なうことは禁⽌されていますが、これは事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告⾃体を規制するものではありません。例えば、『10⽉1⽇以降○%値下げ』『10⽉1⽇以降○%ポイント付与」などと表⽰することは問題ありません。』」
と書かれているのみである。つまりは消費者には納税を含めて、法的には何ら義務がないと解釈できる。これらで規制されているのは「事業者間の取引でしっかりと然るべき金額を払いなさいよ!」ということで、逆にそこを抑えておけば徴収は確実に行える。
・ではなぜ財務省は『予定』などと気持ち悪い表現で書かざるを得ないかというと、ちょっと考えればわかる。消費税の実態は付加価値にかかる付加価値税であって一種の法人税。(第二法人税と呼ぶ人もいます)付加価値を生んでいるのは消費者ではなく事業者。つまりしっかりと徴税するためには付加価値を生む取引を抑えることが重要で消費者なんかどうでも良いわけです。ましてや長いサプライチェーンの中では付加価値が発生する都度課税されるわけで、消費者が消費する以前に課税されています。消費税と言いながら消費にはかかっていないと言っても良いのではないでしょうね。ですから「消費税」というネーミングは一種の誤魔化しです。新たに負担させられる事業者(特に中小企業)に耳障りのいいような誤解を与えるためなのでしょう。ここで「中小企業」と言っているのは、大企業や輸出企業には、後述しますがウラの大きなメリットがあり、こちらは喧伝されず隠されているのです。そしてその分「値上げしていいよ」と囁いているのです。「但し、できるんならね」というのが言外のメッセージです。
<例> A社が仕入0円の原材料をB社に10万円+10%で販売し、B社はそれで完成品を作りC社に20万円+10%で売り、C社はそれを消費者に25万円+10%で販売したとしましょう。国が徴税するのは
A社の10%分 = 1万円
B社の10%分 = 2万円からA社の消費税分請求(1万円)を引いた1万円
C社の10%分 = 2万 5千円からB社の消費税分請求(2万円)を引いた5千円
で、国が受取る消費税は合計2万5千円。ここには消費者は一切出てこないで徴税は完了している。しかし、消費者のレシートには恐らく2万5千円が消費者負担のイメージで書かれているし、消費者は確かに同額(=2万5千円)を追加で払っていることになる。この辺りはGDPの三面等価をイメージさせる。その意味では厳密には消費者負担とは言えないので、よくある啓蒙サイトが「消費者が負担する」と言い切るのは言い過ぎでしょう。とはいえ、実質は消費者が負担しているのと変わらない気がする。この辺り非課税取引とか免税事業者とかがあるので、細かな異論はあるでしょうが。


